計画開始から3年余り。ようやく黒松内町民の切望する高齢者住宅が着工しました。
初めて事務長さんから弊社に声をかけて頂いたのが2008年11月。その時は今後の高齢者住宅事業の展開をどう考えたらいいかアドバイスがほしいというものでした。
ひととおり地域の状況や事業イメージを伺い、将来展望や条件を整理して提案したのが「高優賃制度の活用」の可能性。高優賃とは「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の基づいて都道府県知事の「認定」を受けた高齢者専用の住宅です。地方公共団体・国から整備に要する費用の補助、家賃の減額に要する費用の補助など各種の助成が期待できます。入居者は最大4万円の家賃補助が受けられて、24時間の職員常勤で安心生活がおくれます。
しかし、当時高優賃の制度が策定されていたのは札幌市、旭川市、函館市のみ。北海道としては「道優賃」という名称で5年間ほど制度がありましたが2006年に廃止されています。(2010年に竣工した「勤医協かしわの杜」は札幌市の制度を提案・活用しています)
以前から「法律上は自治体が制度を策定すれば北海道としても個別に認定を出すことができるのでは・・・」と考えていて、この機をチャンスとばかりに独自で北海道の住宅課と交渉。しかし既に当時の状況を知る担当者もおらず制度要綱も施設基準も見当たらないとにべもない・・・。北海道の担当者をその気にさせなくてはスタートすらできません。あきらめの悪い僕は高齢者住宅の重要性と地域の願い、国の動向と北海道のあるべきスタンスなどを訴えるなかで「自治体が策定するなら北海道としては高優賃施設基準を作り直した上で認定審査をおこなう」と何度かの交渉の末に前向きな対応してもらえる回答を得ました。
さて次は黒松内町との交渉。診療所の事務長さんに同行してもらいながら町長、副町長、保健福祉課、建設水道課、企画調整課と何度も足を運び、制度の概要と展望について提案して高優賃の優位有を訴え、「北海道も町の意向があるなら認定を出してくれる」と。さらに町有地の提供までお願いしました。2009年9月には町にも内諾してもらい、次々年度に運用できるよう、道からの権限移譲申請、国とのヒアリングなど制度策定するための準備を進めてもらうこととなりました。
そこから建設委員会の開始です。2009年11月から月1回ペースで2011年1月まで行い、友の会総会での説明会を経て最終的にはRC造平屋1270㎡、デイサービス併設の高優賃26戸となりました。
住戸は25㎡で浴室、バルコニー付。食堂は中庭に面した明るいオープンスペースとなっています。
ちょっと焦ったのが、計画も大詰めの2010年秋。高齢者居住安定確保法が改正されて高優賃のカテゴリーが廃止されるという情報が・・・。法律がなくなったら計画は頓挫です。
情報収集すると「法律施行前に設計が開始されている物件は継続」できると例外規定が盛り込まれ一安心。札幌市も新規認定がなくなったので北海道で最後の高優賃認定物件となりました。(ホッ)
もっともこれから羊蹄山なみのハードルである補助金交付申請をクリアするという大苦行があるのですが・・・